RPA・Seleniumが使いにくい現場での代替案
ExcelとQRリーダーで入力作業を減らす方法

RPA・Selenium・VBA・UI Automationが使いにくい現場で、ExcelとQRリーダーを組み合わせて入力作業を減らす考え方を整理します。QRリーダーはキーボード扱いのため多くのソフトで動きますが、条件分岐はできない点も含めて整理します。

最終更新日:2026年5月14日

先に結論

業務の入力作業を減らしたいとき、最初に思いつきやすいのは、 VBA、RPA、Selenium、UI Automation(UIA)、Power Automate Desktop などです。

これらは非常に強力な自動化手段です。 しかし、すべての職場・すべての業務画面で使えるとは限りません。

特に、基幹システム、古い業務アプリ、閉域環境、外部ソフト禁止の端末では、 「自動化したいのに、自動化ツールを使えない」という状況が起こります。

そのような現場では、画面を直接操作するのではなく、 Excelで入力用データを整え、QRリーダーをキーボード入力装置として使う という考え方が選択肢になります。

QRリーダーを「専用連携ソフト」ではなく「キーボード」として見るのが、この方法のポイントです。 キーボード入力を受け付ける画面であれば、Excel、Webフォーム、古い業務アプリ、リモート端末などでも動く可能性があります。 ただし、画面の状態を読み取って「Aなら処理1、Bなら処理2」のように条件分岐することはできません。

そのため、判断はExcel側のデータ作成や人間の確認に寄せ、 QRリーダーには決まった順番の入力列を流す役割を持たせるのが現実的です。

本記事では、RPA・Selenium・VBA・UIAが使いにくい現場で、 ExcelとQRリーダーを使って入力作業を減らす考え方を整理します。

1. RPA・Selenium・VBAは強力だが、現場では使えないことがある

RPA、Selenium、VBA、UI Automation(UIA)は、画面操作や入力作業を自動化する有力な方法です。

たとえば、次のような用途では大きな効果があります。

  • Excelのデータを別システムに入力する
  • Web画面に自動ログインして処理する
  • 定型フォームに値を入力する
  • ボタンを押す、画面を切り替える、結果を取得する
  • 毎日・毎月の同じ作業を自動化する

しかし、実際の職場では次のような制約があります。

  • VBA・マクロが禁止されている
  • 外部ソフトのインストールが禁止されている
  • RPAツールを導入する予算や申請がない
  • Selenium用のWebDriverを配置できない
  • ブラウザの更新でSeleniumが動かなくなる
  • 二要素認証やログイン制御で自動化が止まる
  • 基幹システムが古く、画面要素を認識できない
  • UIAで要素を拾えない、または安定しない
  • EnterキーやTabキーの送信が思った通りに効かない
  • 担当者のPCごとに環境差があり、保守できない

つまり、自動化したい業務があっても、 自動化ツールを導入できない、または安定運用できないケースがあります。

2. RPAが向かない工程とは

RPAは非常に便利ですが、すべての入力作業に向いているわけではありません。

特に、次のような工程では、RPAよりも別の方法を検討した方がよい場合があります。

RPAで困りやすい工程 理由
古い基幹システムへの入力 画面要素を認識できない、または安定しないことがある
閉域環境での作業 外部ツールやクラウド型RPAを使えない場合がある
導入申請が必要な職場 RPAツール導入までに時間がかかる
少量から中量の定型入力 RPAを作るほどではないが、手入力は面倒な場合がある
画面変更が多い業務 ボタン位置や項目名が変わるたびに保守が必要になる
EnterやTabの挙動が特殊な画面 通常EnterとNum Enterの違いなどで詰まることがある

このような業務では、 画面を直接操作する自動化ではなく、 入力するデータそのものを整えて、人間の操作を最小化する という方向が有効な場合があります。

3. Seleniumが使いにくい現場

Seleniumは、Web画面の自動操作に強い方法です。 Webフォームに値を入れたり、ボタンを押したり、画面遷移を自動化したりできます。

しかし、職場の業務システムでは、Seleniumが使いにくいことがあります。

  • WebDriverを配置できない
  • ブラウザ更新で動作が変わる
  • 社内ブラウザ設定で制限される
  • ログインや二要素認証で止まる
  • 画面が特殊で要素を安定して取得できない
  • そもそもWebシステムではなく、Windowsアプリや端末画面である

また、Seleniumは基本的にWeb画面向けです。 古い基幹システム、専用クライアント、リモート端末、エミュレータ画面などでは、 思うように使えないことがあります。

その場合、画面内部の要素を操作するのではなく、 キーボード入力として値を送る発想が役に立つことがあります。

4. VBAのSendKeysやUIAで詰まることもある

VBAで自動化しようとする場合、よく使われるのが SendKeys です。

SendKeys "{ENTER}"

しかし、SendKeys は環境によって不安定になることがあります。

  • フォーカスがずれる
  • 処理タイミングが合わない
  • 送ったキーが反映されない
  • 通常EnterではなくテンキーEnterが必要な画面がある
  • 管理者権限やセキュリティ設定の影響を受ける

UI Automation(UIA)も、Windowsアプリ操作では有効な方法です。 ただし、対象アプリの作りによっては、要素が見えなかったり、 ボタンや入力欄を安定して取得できなかったりします。

このように、VBA、SendKeys、UIAを使っても、 実務画面では思った通りに動かないことがあります。

5. QRリーダー入力自動化という考え方

そこで使える場合があるのが、 QRリーダーをキーボード入力装置として使う方法 です。

多くのQRリーダーやバーコードリーダーは、 読み取った内容をキーボード入力としてPCに送信できます。

これは大きな利点です。 相手がExcelでも、Webフォームでも、専用ソフトでも、古い基幹システムでも、 入力欄がフォーカスされていてキーボード入力を受け付けるなら、同じ考え方で試せます。

つまり、QRコードの中に入力したい文字列を入れておけば、 QRリーダーで読み取った瞬間に、現在フォーカスが当たっている入力欄へ文字が入力されます。

さらに、設定や機種によっては、読み取り後に次のようなキー操作も組み合わせられます。

  • Tab
  • Enter
  • Num Enter
  • Prefix
  • Suffix
  • 文字間ディレイ
  • 読み取り後の待ち時間
  • 一部文字を特殊キーに変換する設定

これにより、単に文字を入力するだけでなく、 入力欄の移動や確定操作まで含めた入力補助ができます。

一方で、QRリーダーは画面を見て判断する道具ではありません。 「エラーが出たら戻る」「在庫が足りなければ別画面へ進む」「入力値によって処理を変える」といった条件分岐は、 QRリーダー単体ではできないと考えておく必要があります。

6. 画面を操作するのではなく、入力列を作る

RPAやSeleniumは、画面そのものを操作しようとします。

一方、QRリーダー入力自動化では、考え方が少し違います。

画面を自動操作するのではなく、 人が入力する順番に合わせて、Excel側で入力用の文字列を作る という発想です。

たとえば、ある画面に次の順番で入力するとします。

  1. 社員番号
  2. Tabで次の欄へ移動
  3. 処理区分
  4. Tabで次の欄へ移動
  5. 対象年月
  6. Enterで確定

この場合、Excel側で次のような入力順序を作ります。

社員番号 + Tab + 処理区分 + Tab + 対象年月 + Enter

それをQRコード化し、QRリーダーで読み取ることで、 手入力の回数を減らせる可能性があります。

この方法は、複雑な判断処理には向きません。 しかし、入力項目の順番が決まっている定型作業には強いです。

条件分岐が必要な場合は、QRを読む前にExcel側で対象データを絞り込む、 確認列で人が判断する、処理パターンごとに別のQRを作る、という形に分けると扱いやすくなります。

7. RPA・Selenium・UIA・QRリーダー入力の比較

それぞれの方法には、向き不向きがあります。

方法 向いていること 苦手なこと
VBA Excel内処理、簡単な定型操作 マクロ禁止環境では使えない
Selenium Web画面の自動操作 WebDriver、ログイン制限、ブラウザ更新に影響される
RPA 画面操作全般の自動化 導入、保守、ライセンス、権限管理が重い場合がある
UI Automation / UIA Windowsアプリの操作 対象アプリによって要素を取得できないことがある
Power Query データ整形、結合、取り込み 入力画面の操作はできない
QRリーダー入力 定型入力、閉域環境、ソフト禁止環境、幅広いソフトへのキー送信 画面状態の読み取り、条件分岐、エラー判断には向かない

QRリーダー入力自動化は、RPAやSeleniumの完全な代替ではありません。

しかし、RPAを入れるほどではない入力作業、 Seleniumが使えない業務画面、 VBAやマクロが禁止されている職場では、 現実的な代替案になることがあります。

8. QRリーダー入力が向いている業務

QRリーダー入力自動化が向いているのは、次のような業務です。

  • 入力する項目が決まっている
  • 入力順序が毎回ほぼ同じ
  • Excel側で入力データを作れる
  • 人が画面を確認しながら進めたい
  • RPAを入れるほど件数が多くない
  • しかし手入力では面倒、またはミスが出る
  • 基幹システムを改修できない
  • 外部ソフトを入れられない
  • バーコードリーダーやQRリーダーが現場にある

たとえば、次のような場面です。

  • Excelの一覧から対象者だけを抽出し、別システムに入力する
  • 固定長帳票やCOBOL帳票を整形し、必要項目だけを入力する
  • 商品コード、社員番号、処理区分などを定型画面へ入力する
  • Tabで項目移動し、最後にEnterで確定する画面に入力する
  • 通常EnterではなくNum Enterが必要な業務画面に入力する

9. QRリーダー入力が向かない業務

一方で、QRリーダー入力自動化が向かない業務もあります。

  • 画面上の条件によって入力内容が大きく変わる
  • 複雑な分岐判断が必要
  • 入力結果を読んで次の操作を自動で変えたい
  • エラー表示を読み取って自動判断したい
  • 大量件数を完全無人で処理したい
  • 画面遷移が毎回大きく変わる
  • 入力先のフォーカスが安定しない
  • 入力ミスが重大事故につながるため完全な検証機構が必要

このような業務では、RPA、Selenium、API連携、システム改修などを検討した方がよい場合があります。

QRリーダー入力自動化は、 すべてを自動化する方法ではなく、人間の確認を残しながら入力負担を減らす方法 と考えると使いやすいです。

逆に言えば、条件分岐をQRリーダーに任せようとしないことが大切です。 QRリーダーは、ほぼキーボードです。 どのキーをどの順番で送るかは得意ですが、画面を読んで判断する役割はRPAや人間側に残ります。

10. Enterが効かない場合はNum Enterを疑う

業務システムでは、通常のEnterキーでは確定できないのに、 テンキー側のEnterでは確定できる場合があります。

このテンキー側のEnterは、Num Enter、Numpad Enter、テンキーEnterなどと呼ばれることがあります。

これは、VBAのSendKeys、RPA、Selenium、QRリーダー、バーコードリーダーのいずれでも問題になることがあります。

たとえば、次のような場合です。

  • Enterを送っているのに画面が進まない
  • バーコードリーダーのSuffixにEnterを入れても確定されない
  • キーボードのテンキーEnterなら確定できる
  • RPAでEnter操作を入れても反応しない
  • VBAのSendKeys "{ENTER}" では期待通りに動かない

この場合、通常EnterとNum Enterの違いを確認する必要があります。

QRリーダーによっては、読み取り後のキーを通常Enterではなく、 Num Enter相当のキーに設定できる場合があります。

このような入力確定の違いは、QR Automationを考える上で非常に重要です。

11. 文字欠けや入力漏れにはディレイが必要になる

QRリーダーで長い文字列を一気に送ると、 入力先のシステムが処理しきれず、文字欠けが起こることがあります。

特に、古い基幹システムや反応の遅い画面では注意が必要です。

この場合、次のような対策を検討します。

  • 文字と文字の間に待ち時間を入れる
  • TabやEnterの前後に待ち時間を入れる
  • 画面遷移後に入力を再開するためのSleepを使う
  • 入力文字列を短く分割する
  • QRコードを複数に分ける

RPAでも画面待機が重要なように、 QRリーダー入力でも、入力先の処理速度に合わせることが重要です。

12. COBOL帳票や固定長データとも相性がよい

QRリーダー入力自動化は、COBOL帳票や固定長テキストの整形とも相性があります。

たとえば、基幹システムから出力された帳票データをExcelに貼り付けると、 A列にすべて入ってしまうことがあります。

その中から、対象者や対象明細だけを抽出し、 必要な項目だけを別システム入力用に並べ替えることができます。

さらに、その入力用データをQRコード化すれば、 QRリーダーを使って別システムへ入力する流れを作れます。

つまり、次のような流れです。

  1. COBOL帳票や固定長テキストをExcelに貼り付ける
  2. 不要行、ヘッダー行、合計行を除外する
  3. 親情報を明細行へ補完する
  4. 対象者や対象明細だけを抽出する
  5. 半角英数字の入力用データに変換する
  6. QRコード化する
  7. QRリーダーで別システムへ入力する

このように、Excelでのデータ整形とQRリーダー入力を組み合わせることで、 RPAやSeleniumを使わずに、入力作業の一部を減らせる場合があります。

13. どの方法を選ぶべきか

自動化方法は、業務の内容と職場の制約によって選ぶ必要があります。

状況 向いている方法
Excel内で完結する処理 関数、Power Query、VBA
Web画面を安定して操作できる Selenium、RPA
Windowsアプリの要素を取得できる UI Automation / UIA
RPA導入が許可されている RPA、Power Automate Desktop
VBAや外部ソフトが禁止されている Excel関数、QRリーダー入力
入力順序が決まっている QRリーダー入力
キーボード入力できるが、自動化ツールは入れられない Excel + QRリーダー入力
完全無人で大量処理したい RPA、Selenium、API連携、システム改修
人間の確認を残しつつ入力を減らしたい Excel + QRリーダー入力

QRリーダー入力自動化は、RPAやSeleniumの代わりにすべてを処理するものではありません。

しかし、制限の多い現場では、 使える道具だけで現実的に入力作業を減らす方法 として非常に有効な場合があります。

14. まとめ

RPA、Selenium、VBA、UIAは強力な自動化手段です。

しかし、職場によっては、マクロ禁止、外部ソフト禁止、WebDriver不可、RPA導入不可、 古い基幹システム、閉域環境などの理由で使いにくいことがあります。

そのような場合、画面を直接操作するのではなく、 Excelで入力データを作り、QRリーダーをキーボード入力装置として使う方法があります。

QRリーダーはキーボード扱いのため、入力欄さえ受け付けてくれれば、 特定のアプリに依存しにくいのが強みです。 ただし、条件分岐や画面判断はできないため、事前にExcel側で入力パターンを分ける設計が重要です。

この方法は、複雑な判断や完全無人処理には向きません。 しかし、入力順序が決まっている定型作業や、 人間が確認しながら進める業務には向いています。

特に、次のような現場では検討する価値があります。

  • VBAやマクロが禁止されている
  • RPAを導入できない
  • SeleniumやWebDriverを使えない
  • 古い基幹システムで画面操作が安定しない
  • 通常EnterとNum Enterの違いで入力確定に困っている
  • Excelで入力データは作れるが、別システムへの入力が面倒
  • COBOL帳票や固定長データを整形して再入力している

RPAが使えないから自動化できない、とは限りません。

画面操作の自動化が難しい場合でも、 入力データを整え、QRリーダーでキーボード入力として流す という別の考え方があります。

制限の多い現場では、このような小さな工夫が、 手入力の削減、ミス防止、作業時間短縮につながることがあります。