行を操る ― フィルター・並べ替え・重複削除・フィル
このページのゴール
Power Queryで行を絞り込む(フィルター)、順序を変える(並べ替え)、重複を消す、空欄を埋める(フィル)操作をマスターし、Excelのオートフィルターとの違いを理解することです。
フィルター ― 必要な行だけを残す
基本のフィルター操作
操作手順
1. フィルターしたい列のヘッダーにあるドロップダウン矢印(▼)をクリックします。
2. 値の一覧が表示されるので、残したい値にチェックを入れます(不要な値のチェックを外します)。
3. 「OK」をクリックすると、チェックを外した値の行が削除されます。
Excelのオートフィルターとの決定的な違い
| 項目 | Excelのオートフィルター | Power Queryのフィルター |
|---|---|---|
| 行の扱い | フィルターした行は非表示(データは残っている) | フィルターした行は完全に除外される |
| 元データへの影響 | 元データを直接操作している | 元データには一切触れない(クエリ内だけの処理) |
| 条件の保持 | フィルターを解除すると元に戻る | フィルターはステップとして保存され、更新のたびに自動適用される |
| 数式への影響 | SUBTOTAL以外の関数は非表示行も計算に含む | 除外された行は存在しないため、すべての処理から除外 |
つまりPower Queryのフィルターは「一時的に隠す」のではなく、「条件に合わないデータを工程から完全に取り除く」操作です。次に更新したときも同じ条件が自動適用される点が、毎回手作業でフィルターするオートフィルターとの最大の違いです。
テキストフィルター ― 部分一致・前方一致・後方一致
ドロップダウン矢印をクリック → テキスト フィルター を選ぶと、より高度な条件が使えます。
| 条件 | 動作 | 例 |
|---|---|---|
| 指定の値に等しい | 完全一致する行だけ残す | 「営業部」に等しい → 営業部の行だけ |
| 指定の値で始まる | 前方一致 | 「東」で始まる → 東京都、東北支店… |
| 指定の値で終わる | 後方一致 | 「県」で終わる → 埼玉県、千葉県… |
| 指定の値を含む | 部分一致 | 「田」を含む → 田中、太田、秋田… |
| 指定の値を含まない | 部分不一致 | 「テスト」を含まない → テスト行を除外 |
数値フィルター・日付フィルター
列のデータ型が数値の場合は「数値フィルター」(より大きい、より小さい、間…)、日付型の場合は「日付フィルター」(指定日以降、指定日の間、今年…)が表示されます。これらはデータ型が正しく設定されていないと表示されないため、前のページ「取り込み直後の5操作」でデータ型を正しく設定しておくことが重要です。
1つの列にフィルターを適用したあと、別の列にもフィルターを追加できます。「部署 = 営業部」かつ「売上 > 100万」のようなAND条件を、フィルターを重ねるだけで実現できます。
並べ替え
操作手順
1. 並べ替えたい列のヘッダーにあるドロップダウン矢印(▼)をクリックします。
2. 「昇順で並べ替え」または「降順で並べ替え」を選択します。
※ヘッダーをクリックした状態でホーム タブ → 並べ替えボタンでも同じことができます。
複数列での並べ替え
「部署で昇順 → 売上で降順」のように複数キーで並べ替えたい場合は、後から並べ替えたい列を先に操作します。Power Queryのステップは上から順に処理されるため、「売上で降順」→「部署で昇順」の順にステップを追加すると、結果として「部署の昇順の中で、売上が降順」になります。
Power Queryにおける並べ替えは、単なる表示順の変更ではなく、後続の操作(インデックス列の追加やフィルなど)の結果に直接影響します。特に「フィル」操作は並べ替え後の行順を前提に動作するため、フィルの前に正しい順序で並べ替えておくことが重要です。
重複行の削除
Excelの「重複の削除」機能に対応しますが、Power Queryでは「どの列を基準に重複を判定するか」をより直感的に制御できます。
操作手順
1. 重複判定の基準にしたい列を選択します(1列でも複数列でもOK。Ctrl+クリックで複数選択)。
2. ホーム タブ → 行の削除 → 重複の削除 をクリックします。
3. 選択した列の値が同じ行のうち、最初の1行だけが残り、2行目以降が削除されます。
Before
| 部署 | 氏名 |
|---|---|
| 営業部 | 田中 |
| 経理部 | 佐藤 |
| 営業部 | 鈴木 |
| 営業部 | 田中 |
After(「部署」列で重複削除)
| 部署 | 氏名 |
|---|---|
| 営業部 | 田中 |
| 経理部 | 佐藤 |
「部署」列だけを基準にしたため、「営業部」の最初の行(田中)だけが残り、鈴木の行と重複する田中の行は削除されました。「部署」と「氏名」の両方を選択していれば、「営業部・田中」が重複するため1行だけ消え、「営業部・鈴木」は残ります。
上位行・下位行の保持と削除
「先頭のN行だけ残す」「末尾のN行を消す」といった操作です。前ページで「不要行の削除」としても使いましたが、ここでは全体像をまとめます。
| 操作 | 場所 | 動作 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| 上位の行の保持 | ホーム → 行の保持 → 上位の行の保持 | 先頭からN行だけ残し、それ以降を削除 | サンプルとして先頭100件だけ確認したいとき |
| 下位の行の保持 | ホーム → 行の保持 → 下位の行の保持 | 末尾からN行だけ残す | 最新N件だけ残したいとき(事前に日付で並べ替え) |
| 上位の行の削除 | ホーム → 行の削除 → 上位の行の削除 | 先頭からN行を削除 | ヘッダー以前の説明行を除去 |
| 下位の行の削除 | ホーム → 行の削除 → 下位の行の削除 | 末尾からN行を削除 | 合計行や注記行を除去 |
| 代替の行の削除 | ホーム → 行の削除 → 代替の行の削除 | N行残してM行スキップを繰り返す | 1行おきにデータが入っている特殊なレイアウト |
フィル ― 空欄を上(または下)のデータで埋める
Excelでよく見かける「セル結合された表」をPower Queryに取り込むと、結合が解除されて先頭行にだけ値が入り、残りがnullになります。この「歯抜け」状態を修復するのがフィル操作です。
Before(セル結合解除後)
| 部署 | 氏名 |
|---|---|
| 営業部 | 田中 |
| null | 鈴木 |
| null | 高橋 |
| 経理部 | 佐藤 |
| null | 山田 |
After(フィル下方向)
| 部署 | 氏名 |
|---|---|
| 営業部 | 田中 |
| 営業部 | 鈴木 |
| 営業部 | 高橋 |
| 経理部 | 佐藤 |
| 経理部 | 山田 |
操作手順(フィル下方向)
1. フィルしたい列のヘッダーをクリックして選択します。
2. 変換 タブ → フィル → 下 をクリックします。
3. null の部分が、直上の値で埋められます。
フィルが埋めるのはnull(値なし)だけです。空文字列("")はフィルの対象になりません。空文字列をnullに変えてからフィルする場合は、値の置換で "" を null に変換するか、列を選択して右クリック →「値の置換」→ 検索する値を空欄、置換後も空欄にして「詳細オプション」で「セル全体の内容を照合する」にチェック → 置換後に「null」を選ぶ方法があります。
フィルは「直上(または直下)の値をコピーする」操作です。データの順序が期待と違うと、間違った値で埋められます。フィルの前に、必ず行の順序が正しいことを確認してください。
フィル上方向
変換 タブ → フィル → 上 を使うと、null の部分が直下の値で埋められます。使用頻度は低いですが、最終行にだけ合計値があり、それを全行にコピーしたい場合などに便利です。
null・空白・エラー行の処理まとめ
行操作でよく遭遇する「困ったデータ」と、それぞれの対処法をまとめます。
| 状態 | データプレビューでの見え方 | 対処法 |
|---|---|---|
| null | セルにイタリック体で「null」と表示 | フィルターでnullを除外 / フィルで埋める / 値の置換でnullを特定の値に変換 |
| 空文字列("") | セルが空に見える(nullとは違い何も表示されない) | 値の置換で "" → null に変換してからフィルターまたはフィル |
| Error | セルに赤字で「Error」と表示 | ホーム → 行の削除 → エラーの削除 / 右クリック →「エラーの置換」で任意の値に変換 |
実践例 ― 結合セルのある報告書データを整える
部署のセルが結合された報告書をPower Queryに取り込み、フィルで空欄を埋め、不要行を除去し、特定の部署だけフィルターする一連の流れを実践してみましょう。
Step 1:フィルで部署の空欄を埋める
「部署」列を選択 → 変換 → フィル → 下
Step 2:合計行を削除する
「氏名」列のドロップダウン → 「合計」のチェックを外す、またはテキストフィルター →「指定の値を含まない」→「合計」
Step 3:営業部だけにフィルターする
「部署」列のドロップダウン → 「営業部」だけにチェック → 「OK」
Step 4:売上の降順で並べ替え
「売上」列のドロップダウン → 「降順で並べ替え」
4つのステップで、結合セルのある見づらい報告書が、営業部の売上ランキングに変わりました。
まとめ
行操作のポイントは3つです。第一に、Power Queryのフィルターは行を「隠す」のではなく「除外する」操作であり、ステップとして保存されるため次回更新時も自動適用されること。第二に、フィルは null だけを対象とし、空文字列は対象外であること。セル結合データを扱うときは特に注意が必要です。第三に、並べ替えは後続の操作(フィル・インデックス列)に影響するため、「いつ並べ替えるか」を意識して配置すること。この3点を押さえれば、行操作は自信を持って使いこなせます。