QRコード → キー変換テクニック
― テンキーEnter・ファンクションキーをQRから送信する
ExcelでQRコードを作成し、QRリーダーやバーコードリーダーで読み取って、Excel入力・Webシステム入力・業務システム入力を自動化したい場面を想定しています。
↵ Enter / Tab の共通整理
QR入力では、読み取り先によって最初に試す制御を分けます。Num Enter は Excel の CHAR 関数では生成できないため、必要な場合はQRリーダー側のキー変換で確認します。
| 用途 | まず試すもの | 備考 |
|---|---|---|
| Excelで次行へ移動 | CHAR(10) | ExcelのEnter移動設定やリーダーのサフィックスに依存します。 |
| Webフォームの確定・検索 | CHAR(13) | 画面ごとに差があるため、検証画面で確認します。 |
| 基幹系の確定 | Num Enter | CHAR関数では生成できません。QRリーダー側のキー変換が必要です。 |
| Tab移動 | CHAR(9) | 多くのExcel/Webフォームで安定しやすい制御です。 |
🎯 この記事のゴール
②で突き当たった「テンキーEnterが送れない」「ファンクションキーが送れない」という限界。 CHAR関数はASCII(0〜127)の範囲しか扱えないため、通常はQRリーダーからテンキーEnter(NUM Enter)や、PrintScreen、Pauseキー、PageDown、PageUpといった非ASCIIの特殊キーは原理的に出力できません。これがこれまでの自動化における最大の「壁」でした。
しかし、この記事ではQRリーダーが持つ「キー変換(リマップ)」機能を利用して、この壁を突破します。Tabは CHAR(9)、通常Enterは CHAR(13) / CHAR(10) で済む場合が多いため、キー変換はNumEnter、PageUp・PageDown、Home、Fキー、Pauseなど、CHAR関数で扱いにくいキーに絞るのが基本です。
🚧 CHAR関数の限界 ― 送れないキー一覧
まず、CHAR関数(ASCII)で送れるキーと送れないキーを整理します。
| キー | CHAR関数で送れる? | 現場で必要になるシーン |
|---|---|---|
| Tab | ○ CHAR(9) | セル横移動 |
| メインEnter(CR/LF) | ○ CHAR(13)/CHAR(10) | セル改行 |
| ESC | ○ CHAR(27) | 編集キャンセル |
| Ctrl+S, Ctrl+C 等 | ○ CHAR(1)〜(26) | 保存・コピーなど |
| テンキーEnter | ✕ | 業務システムの入力確定(これが最多) |
| F1〜F12 | ✕ | F2=セル編集、F5=ジャンプ、業務システムのファンクション操作 |
| 矢印キー(↑↓←→) | ✕ | カーソル微調整、ドロップダウン選択 |
| Home / End / Page Up / Page Down | ✕ | 画面スクロール、先頭/末尾ジャンプ |
| PrintScreen | ✕ | 画面キャプチャ |
| Delete | ✕ | セル内容削除(CHAR(127)=DELとは異なる場合がある) |
🔄 キー変換とは ― 原理
キー変換(Key Remapping / Character Replacement)は、QRリーダーが持つ機能で、「QRデータ内の特定の文字を読み取ったとき、それを別のキーに変換してPCに送信する」というものです。
変換なしの場合(通常動作)
キー変換を設定した場合( ~ → テンキーEnter に変換)
つまり、QRデータ内に「トリガー文字」(例:~)を仕込んでおき、リーダーの設定で「~ を読み取ったらテンキーEnterに変換して送信せよ」と指示するだけです。 CHAR関数で ~ を入れるのは簡単(CHAR(126))なので、これでASCIIの壁を完全に突破できます。
🏷️ トリガー文字の選び方
キー変換のために「データとして使わない文字」をトリガーとして予約する必要があります。 業務データに登場しにくい記号を選ぶのがコツです。
| トリガー候補 | CHAR関数 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|---|
| ~(チルダ) | CHAR(126) | ◎ | 業務データにほぼ登場しない。最も使いやすい |
| ^(キャレット) | CHAR(94) | ◎ | 業務データにほぼ登場しない |
| |(パイプ) | CHAR(124) | ○ | PrintScreenなど特殊操作に向く |
| `(バッククォート) | CHAR(96) | ○ | 使いやすいが一部プログラミング系で使う |
| { } | CHAR(123) / CHAR(125) | ○ | ペアで使えるのでプレフィックス方式に向く |
| \(バックスラッシュ) | CHAR(92) | △ | ファイルパスで使うため衝突リスクあり |
🔧 設定方法 ― メーカー別ガイド
キー変換設定の基本ステップ
| 手順 | 操作 |
|---|---|
| 1 | メーカーの設定マニュアルで「Key Remapping」「Character Replacement」「ASCII to Key」のセクションを探す |
| 2 | 「トリガー文字(元の文字)」を指定する(例:~ = 0x7E) |
| 3 | 「変換先キー」を指定する(例:Numpad Enter = 0x58) |
| 4 | 設定用バーコードを読み取る or 専用ソフトで保存する |
| 5 | テスト用QRをスキャンして変換が正しく動作するか確認 |
EZConfig / Data Formatter / Key Strokes
Honeywellでは、CRやTabのような制御文字と、NumEnterのような実キー入力で設定場所が分かれる場合があります。Tabは CHAR(9) で済むならQR側に直接入れ、NumEnterは Control Characters や Extended ASCII 側ではなく、EZConfig の Insert → Key Strokes 側で探すのが重要です。Data Formatter と組み合わせることで、トリガー文字をキー送信や待機処理に変換できます。
Advanced Data Formatting(ADF)
ZebraのADF機能を使います。「When character is [0x2F]」→「Send key [Numpad Enter]」のようなルールを設定します。123Scan ユーティリティからGUIで直感的に設定できます。ADF は非常に高機能で、NumEnter、Pause、Page系キーなどを固定手順として整理しやすいのが強みです。Tabや通常Enterは、QR側の CHAR(9) / CHAR(13) で足りるなら変換しません。
Character Replacement / Key Function Code
Opticonは「Key Function Code」テーブルを持っており、設定用バーコードで「置換元文字」と「置換先キー」を指定します。NUM Enter、PageUp・PageDown、Home、Sleep用の記号変換をQR文字列側から組み合わせやすい一方、設定体系の理解には時間がかかります。Tabや通常EnterはCHAR関数を優先し、Universal Menu Book の「Function Code Mapping」セクションを参照してください。
AutoID Network Navigator → キーコード変換
専用ソフト「AutoID Network Navigator」の「キーコード変換」タブで、GUIのドロップダウンからトリガー文字と変換先キーを選択するだけで設定できます。日本語UIなので最もわかりやすいです。
QBdirect → キー変換
専用ソフト「QBdirect」の「キー変換」機能で設定します。変換元と変換先をドロップダウンで選択する形式です。
🧪 テスト方法
テンキーEnter変換のテスト
| 手順 | 操作 |
|---|---|
| 1 | リーダーに「~ → テンキーEnter」のキー変換を設定する |
| 2 | テスト用QRデータを作成:="TEST"&CHAR(126) |
| 3 | メモ帳を開き、スキャンする。「TEST」と入力され、~ がそのまま表示されず、何らかのEnter動作が起きることを確認 |
| 4 | 業務システムを開き、入力欄にカーソルを置いてスキャンする |
| 5 | Num Enterを要求する業務システム、またはキーコード確認ツールでNum Enterとして有効かを確認。メインEnterでは確定しなかった画面でスキャン時だけ確定すれば、変換成功と判断しやすい |
⚡ 注意点
📝 この記事で学んだこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| CHAR関数の限界 | テンキーEnter・ファンクションキー・矢印キーなど非ASCIIキーは生成不可 |
| 解決策 | QRリーダーのキー変換(リマップ)機能を使う |
| 原理 | QRデータ内のトリガー文字をリーダーが検知 → 別のキーに変換してPCに送信 |
| トリガー文字 | ~ CHAR(126)、^ CHAR(94) がおすすめ |
| 最頻出の変換 | ~ → テンキーEnter(業務システム確定用) |
| 設定方法 | メーカーのマニュアルから設定用バーコード or 専用ソフト |
| 注意点 | トリガー文字はデータに使えなくなる / ディレイとの併用必須 / 変換数上限あり |
🔜 次に読む記事
| あなたの状況 | 次に読むべき記事 |
|---|---|
| キー変換を業務シナリオで使いたい | ⑤ キー変換の実践シナリオ |
| 帳票出力待ち・画面遷移待ちなど秒単位の停止が必要 | ⑥ Sleep(一時停止)で処理完了を待つ |
| 全テクニックを組み合わせた完成形を見たい | ⑦ フルシステム統合 ― 22手作業を8秒に |
QRリーダー連携の運用注意
QRリーダーは多くの場合、PCにはキーボード入力として認識されます。Tab、Enter、ファンクションキー、待機時間を組み合わせると登録・更新・削除などの操作まで進められるため、実務投入前の検証手順を必ず固定してください。
- 本番データではなく、架空データと検証用画面で読み取り順、セル移動、登録操作を確認する。
- 個人情報、認証情報、機密コードをQRにそのまま埋め込まない。必要な場合は最小限のIDに置き換える。
- 設定バーコード、初期化手順、復旧手順を保存し、誰が変更したかを記録する。
- キー変換や待機時間を変更した後は、Excel以外の画面がアクティブな状態で誤送信されないか確認する。